1.不倫という概念は人それぞれ
このサイトではわかりやすさを重視して『不倫』と表現していますが、一言に浮気や不倫といっても様々なものがあります。
他の異性とメールをしただけで不倫という人もいるかもしれません。
配偶者が「不倫だ」と感じる行為が行われたら即慰謝料請求ができるわけではありません。慰謝料を請求するためには、『不貞行為』に該当しなければいけません。
2.不貞行為とは
不貞行為とは、「配偶者ある者が、自由な意思に基づいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいうのであって、この場合、相手方の自由な意思にもとづくものであるか否かは問わないものと解する」と判示されています(最判昭和48年11月15日・判例タイムズ303号141頁)。
この定義をみると、性的関係をもった場合のみ不貞行為に該当するように見えますが、裁判例を見る限り、性的関係(つまりは肉体関係)を持っていない場合でも不貞行為が認められることがあります。
たとえば、東京地判平成17年11月15日は「第三者が相手配偶者と肉体関係を結んだことが違法性を認めるための絶対的要件とはいえない」と判示しています。
ただ、どこまでいけば不貞行為として慰謝料が請求できるのかは、実は裁判例によってもかなり判断がわかれています。
実は、ここまではセーフ、ここまではアウトという明確なボーダーラインは裁判所も引いてはいないのです。
(だからといって、肉体関係を持っているにも関わらず不貞行為ではないと争ってもそれが認められることはないでしょう。性行為や肉体関係は典型的な不貞行為であり、(夫婦関係が破たんしていた等の主張がある場合は別として)性行為や肉体関係を持っても不貞行為ではないと強弁しても無駄な抵抗といわざるを得ません。あくまでも判断が分かれるのはボーダーラインのケースです)まとめると、次のような行為が不貞行為になるでしょう(安西二郎裁判官「不貞慰謝料請求事件に関する実務上の諸問題」判例タイムズ1278号45頁参照)。
・性行為や肉体関係
・性交類似行為(同棲など)
・婚姻関係を破たんに至らせる可能性のある異性との交流・接触
3.婚姻関係を破たんに至らせる可能性のある異性との交流・接触とは
婚姻関係を破たんに至らせる可能性のある異性との交流・接触というのは上記でいうボーダーラインに沿うとするものです。
このような行為は、多種多様なものが考えられます。
さらには、たとえば時代とともに社会通念が変化するように、このような婚姻関係を破たんに至らせる行為というものは時代によっても変化する可能性があると考えられます。具体的にはブログ等で解説をしていきますが、たとえば、「あいたい」「大好きだよ」というメールを送っていたこと自体が違法と認められたこともあります(ただ、似たような案件でこういったメールを送ることは違法ではないと判断した裁判例もあり、ボーダーラインはかなりゆれうごいています)。
ほかにも、手をつないで歩いていたことをもって慰謝料請求訴訟を起こされた事案もありますが、さすがに手をつないだという行為だけでは、不貞関係の存在が推認されるものではないとして、請求は認められませんでした。肉体関係をもっていたらそれは即不貞行為といえるようなものです。
しかしながら、不貞行為というのは必ずしも肉体関係に限定されてはいないということに注意しましょう。
4.慰謝料請求は弁護士に相談を
肉体関係があったとして慰謝料請求をしても、お金の話になると途端に消極的になるのが人間です。
慰謝料を請求したいという方は、まずは、弁護士に相談されることをおすすめします。
また、肉体関係はなかった、しかし、婚姻関係を破たんに至らせる可能性のある異性との交流・接触があったとして慰謝料を求めていくケースは、より困難性が増します。
不貞行為というと、たいていの方は肉体関係を想像します。
肉体関係を持っていないのに不倫だというのはおかしいと反論をされるでしょう。
こういった場合に、そうではないんだよ、婚姻関係を破たんに至らせる可能性のある異性との交流・接触も不貞行為に該当するんだよ、と説明していくことが重要ですし、相手が慰謝料の支払いに応じなかった場合には訴訟も意識する必要があるでしょう。